MIMの代表的特徴
材料について
MIMは金属粉末を焼結させるという製法であるため、粉末が準備でき、焼結可能な金属である限りあらゆる金属材料に対応が可能です。研究されている段階のものも含めると、現時点では一般に難削材と呼ばれるようなチタンや超硬合金といったものまで成形が可能であるとされています。
また金属粉末の射出成形では材料の混合や層の形成等が容易に行えるため、異材質の複合化やバイメタルの一体成形といった通常の加工方法では不可能な加工にも対応が可能になってきています。
その他、耐熱材料、堤膨張材料、超硬合金、セラミックス等による成形も可能です。
形状について
MIMは射出成形という特性上、金型を用いて加工が行われます。
そのため、形状については非常に自由度が高く、複雑形状部品や微細形状部品の加工に適していると言えます。
特に、自由曲面形状や、複雑形状等を得る場合には通常5軸加工機や各種専門機が必要になりますが、MIMの場合は型での成形を行うため、一体成形での加工が可能でコスト面でも優れています。
精度について
後述するようにMIM単体では精度がおよそ100分の3程度ですが、通常機械加工で加工しなければならない1000分の1といった精度の製品でも、一体成形が可能なMIMで製品形状を出した後に二次加工を行うことで、大幅なコストダウン効果を得られることもあります。
一方で製品サイズの大きいものは金型が大きくなり、使用する粉末も大量になるのでコストメリットが出しにくいケースが多くなります。
各種特性について
MIM部品は金属粉末の焼結体ですが、通常の金属と同じように表面処理、熱処理等が可能です。表面研磨やメッキ加工をほどこす事も可能で、汎用性に富んでいます。
MIMの一般的仕様の目安
一般的なMIM仕様の目安について、以下表に記載します。
仕様(MIM) | ||
---|---|---|
仕様(MIM) | 長さ | <30mm |
厚さ | 0.5~5mm | |
寸法公差 | 5mm以下 | ±0.03mm |
5~10mm | ±0.04mm | |
0~20mm | ±0.08mm | |
20~30mm | ±0.15mm | |
表面粗さ | Ra | <3μm |
Rmax | <10μm | |
重量 | <50g |
磁気力のコントロールが可能なMIM
MIMは材料となる金属粉末によって、様々な性質を持たせることができます。磁性材料を使用した磁気力のコントロールもそのひとつです。磁性材料とは、磁気に対して強く反応する性質を強く持つ材料の総称です。大きく分けると、強磁性材料と軟磁性材料の2種類に分けることができ、磁気を蓄える性質の保持力が大きく透磁率が小さいものを強磁性材料、保持力が小さく透磁率が大きいものを軟磁性材料と呼びます。
こういった磁性材料を加工する際には、材料が持つ磁性と加工方法(切削、粉末冶金)の制約により複雑形状の部品に応用することが困難とされてきましたが、MIMを用いることによりこれまでの課題を解決、低コストで複雑形状の磁性材料部品を得ることが可能になってきています。一部では量産化も始まってきており、今後の拡大が注目されています。
MIMによって利用可能な軟磁性材料の例
下記にはMIMによって製造可能な軟磁性材料の例を示します。特に電子部品や精密機械部品での利用が検討されており、MIMによる生産が安定すればこういった部品を安価に調達することが可能になるため、研究が進められています。
MIMと他の加工との比較
下記にMIMと他の工法との特性の比較を示します。
各工法の一般的な特性比較一覧表
機械加工 | 粉末冶金 | ロストワックス | MIM | |
---|---|---|---|---|
密度 | 1 | 0.8 | 1 | 0.95 |
引張り強さ | 1 | 0.8 | 0.9 | 0.95 |
硬度 | 1 | 0.8 | 0.9 | 0.95 |
形状複雑度 | 中 | 低 | 高 | 高 |
面粗度 | 高 | 中 | 低 | 高 |
対応材料幅 | 低 | 高 | 低 | 高 |
生産コスト | 高 | 低 | 低 | 中 |
対応サイズ | 大 | 中 | 中 | 小 |
精度 | 高 | 中 | 中 | 中~高 |